身体コンサルタント / 柔道整復師 田上耕三の身体研究コラムColumn

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ピアノ演奏と手首

今日は、手首について考えます。
当コラムの「腕のポジション」では、前腕が綺麗に回内することが必要と述べました。
綺麗に回内した前腕の先にあるのは、まずは手首、手のひら、指となります。

1)動作の分析
 手首の動きは演奏にとても重要なものであると考えています。「手首を柔らかく」「手首が下がっている」「曲がっている」など手首関連の修正ポイントは多いと考えています。
そこでまず、演奏にかかわる手首の動きを見ておきます。

1)手首が小指側に曲がる :尺屈
2)手首が親指側に曲がる :橈屈
3)手首が反る      :背屈(手の甲側手背側に曲げる)
4)手首が下に曲がる   :掌屈(しょうくつ・手のひら側に曲げる)

演奏時は,動きをに注意する必要があります。他にもぶん回しという手首が円を描くような動作もありますが、
ピアノ演奏で手首をぶん回すことは無いと思いますのでこの4方向をみておきます。
1)尺屈                      

2)橈屈

3)背屈

4)掌屈

一応解剖図を記します。

(プロメテウス解剖学アトラス 上肢の骨:手 P.222)
尺屈と橈屈は、有頭骨を中心に動いていることが分かります。
掌屈と背屈もやはり有頭骨を横に貫く軸があり回転するように動いています。
細かい解剖図は割愛しますが、写真でだいたいこの辺りと認識していただければ十分です。

このように手首の動きは、解剖学的、機能的にみても有頭骨を中心にした状態で動くように
身体の構造ができていることがおわかりいただけたと思います。

3)演奏時の手首の動き
 演奏する時の手首は、柔らかく使いたい。言い方を変えると固まらせずに使いたい。
手首の動きをスムーズに柔らかく使いたいと望むなら、前腕の真ん中の延長線上に
有頭骨がくるようなポジションを意識すれば自然に動かしやすくなります。

4)正しい状態の目安は何?
 「有頭骨」を中心にした状態でと言うと非常に分かりずらいので、前腕の延長に第3指中指がくるように
ポジションをとることをお勧めするのです。
有頭骨は第3中手骨と関節面を持ち、第3中手骨は第3基節骨すなわち中指と関節をもつ骨なのです。
したがって、3の指が前腕の真ん中の延長線上にあれば、有頭骨が動かしやすいポジションに自然に
くることが簡単にわかります。

5)常に手首が尺屈した状態になってしまう方へ
 おそらく、小さな手でオクターブをつかもうとするあまり、小指を外に外に広げて
使うようになってそのような癖がついたと考えられます。
その状態が、弾きやすく思えるかもしれませんが、尺屈が強くなると手首が固まりやすくなります。
ですから小指のラインを柔軟に使うためにも3の指が真ん中に来るイメージを作ることが必要です。

6)尺屈が手首を固める原因の考察
 尺屈が強くなる癖がある場合は、尺屈と共に小指が外に広がる運動が混在しているはずです。
これは、小指外転筋の影響によります。小指外転筋は尺屈をさせる尺側手根屈筋と筋肉の停止が同じです。
ほとんど一体物といっても構わない状態です。
さらに、尺側手根伸筋も第5中手骨の底に(屈筋とは少しだがズレている)停止しています。
その作用は、伸展(伸ばす)の他に尺屈の要素も含んでいます。
つまり、尺屈の状態は第5中手骨を上下から挟み込むように力が入ってしまうのです。
尺屈は、小指側で手首の上下を固めている状態といえます。
この状態では、手首を柔らかく使うのは難しくなります。
だって自らガッチと固めておきながら、でも柔らかくとか言うのは無理ですね。

ついつい尺屈してしまう場合の改善にも、3指の中心の意識を強く持つことが重要になると考えています。
この点については、演奏の具体的なテクニックになりますので、ここでお話するのは控えたいと思います。

7)3指を中心にもってくるための、具体的な対策
 具体的対策として、前腕から3の指まで「腕の中に一本の軸」をイメージすると分かりやすい
と思います。私の考案した「整軸体操」の「やきとり」という体操をすると直ぐにイメージがわきます。
3の指から肘まで前腕の中に「串」があるようにイメージして前腕の回内と回外を繰り返します。
3の指を軸とした回転運動です。
綺麗にクルックルッと回すことがポイントです。3の指がクニャクニャしていると軸回転ではなくなり、
面回転になってしまいます。こうなると「うなぎのかば焼き」になってしまいます。
私たちが目指すのは、「やきとり」ですからうなぎにならぬように注意してください。

図解です。

手の部分の詳細です。
まず上から見て前腕が真っ直ぐなるように構えます。正面から見ても上の図のように真っすぐに
なるように構えます。

上の状態から回内した状態です。前腕の真ん中を貫く軸棒で軸回転して回内します。

回内から回外した状態です。やはり綺麗な軸を崩さないように回外します。

ここまでの3枚の画像は回内と回外を繰り返し行っているだけです。
しかし、腕の真ん中、中心を軸棒がイメージをしっかり持ちます。3の指を軸棒としてイメージ
すると分かりやすいと思います。

悪い例を次に紹介します。


この上の二枚は、3の指からの軸が曲がっています。
これでは、何度やっても前腕に軸のイメージはつきません。
3の指が曲がった状態で回内回外をしても、軸回転ではなく、面回転に近い動作になります。
これを「うなぎのかば焼き」と呼んでいます。
目指すは「やきとり」です。

以上です。

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